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五月雨

梅雨時、雨籠りして家で読書をするのも梅雨時の楽しみ方の一つでしょうが、日々仕事で東京のビル林にいますと、せっかくの梅雨なのだからと、郊外へと足を伸ばしたくなります。

ある人は「旅は梅雨に限る。」といいます。これは訪れる地の風景の良さを見抜くには、人気が少ない梅雨時をがもっともいい、というのです。確かに、私も雨の降る日に出かけると静けさが心地よく感じることがあります。一昨年雨の角館をそぞろ歩きした時、本当に人通りがなく、本当の角館の風景を見た気がしました。

それはそれでよしとして、もっと、この時期にしか味わえない風景を味わいたいから、私は郊外つまり少し田舎に出かけたくなるのです。

梅雨を五月雨(=SAMIDARE)を言いますが、これは早苗月の水垂れ(「さ」なえつきの「み」ず「たれ」)の音からだと言います。五月雨をSAMIDAREとして楽しむ、この露けき風景を、この時期にしか味わえない稲の景色を楽しもう、というのです。

この五月雨の風景を絵に留めた人がいます。生涯のほとんどを茨城県の牛久沼のほとりで農業を営みながら絵を描いた小川芋銭(Ogawa,Usen 1868-1938)です。この小川芋銭の絵は、もう失われた日本の風景かもしれません。でも、常磐線の車窓から同じように五月雨の中、農作業をしている人を見ると、五月雨の風景です。それは芋銭の風景です。雨の中の農作業というと、本当はそんなに生やさしい状況ではありません。

小川芋銭「五月雨」
http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=52175

確かに今も昔も、あまり雨が強すぎると小川が氾濫してしまう心配があり、そんなに生やさしい風景ではありません。小川はすぐに氾濫してしまうでしょう。しかしそれでさえ、昔人は歌として残してきたのも事実です。ですから、この時期の雨を、稲作にとってとても大切な恵みの雨を、この時期の「雨の風景」を楽しみたいのです。


五月雨はいささ小川の橋もなし
いづくともなくみをに流れて
(山家集・西行)


五月雨をindoorで楽しむことも出来ます。冒頭書いたととおり、雨籠りしてみるのもいいでしょう。せっかくの長雨なのですから、長雨(ながめ)を眺め(ながめ)て見ればいいのです。昔人は上手く「音」を詠んだものです。


花の色はうつりにけりないたづらに
わが身よにふるながめせしまに
(古今集・小野小町)


そう、よに(夜に、世に)、ふる(降る、経る)、ながめ(長雨=眺め)て、みれば、長雨も、趣のある風景ではないでしょうか。

せっかくです、雨を楽しみましょうよ。
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